優しい爪先立ちのしかた
栄生の告白に、呉葉は伸ばした手を止めた。
引き出しの中に、一枚も写真は残っていない。
そこに栄生との思い出は無くなってしまった。
「何言ってるの……」
「貴方の涙を見て、私はその夜、泣いて眠れなかった。頭が可笑しくなって、壊れるかと思った」
「やめて、もう……」
「ねえ、伝言は伝わった?」
呉葉が栄生を見た。
笑っている。狂気の笑み。
壊れてしまう。
いや、もう壊れていた。
「いいの、私は貴方もそのお腹の子も恨んだりしない。だから、もう私を縛り付けないで?」
大量の写真の入ったバケツを持って、呉葉の横を通り抜ける。栄生はタイツのまま縁側から降りて、すぐその場にバケツを置いた。