優しい爪先立ちのしかた

肩を竦める。梢の眉が微かに動いた。

「聖だ」





「壱ヶ谷梢といいます」

栄生が目を輝かせた。

「貴方が梢!?」

梢の手を取る。先ほどまでの一線引いた態度とは違い、ぐいぐいと近付いた。

「あのね、聖とお兄さんから聞いてたの。梢は退院したからすぐに会いに来てくれるって。怪我は大丈夫? 私のこと庇って怪我したんだよね、ごめんなさい……」

「大丈夫ですよ」

捲し立てる栄生に、苦笑いしながら答える。潮の香りが前髪を撫でた。

「聖とお兄さんが言ってたんだけど、梢は私の恋人なのって本当?」

その言葉を聞いて、目を丸くする梢。

なんでこんな所に潜めているのか。



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