優しい爪先立ちのしかた

携帯で栄生の番号にかける。が、コール音が続くだけだった。

「遅い…」

今までこんなに遅くなることは無かった。部活にも所属していないらしい彼女は学校が終わればすぐに帰ってきたし、多少遅くなる日は連絡があった。

まさか、何かあったのでは。

しかし、今日のあの態度。何か栄生の気の障るようなことをしてしまったのだろうか。

いやでも、熱があってどこかで倒れているのかもしれない。

もしかしたらカナンと一緒にいるのかもしれない。そんな淡い希望を抱いて、梢は夜になって晴れた空の下に出た。

戸締りをきちんとして、街灯の少ない道を歩き始めた。



「肉より魚派?」

「魚より野菜派ですけどね」

鯵の開きを食べる栄生が答えると、焼き鳥を食べる先輩が感心したように「へえ」と言った。更にキャベツをぱりぱり食べる姿に笑う。

「なんか可愛い。小動物みたいで」



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