あなたと私のカネアイ
「最初に会ったときから興味があったんだ。お金が欲しいってはっきり宣言する女の子は、それだけで強烈な印象を残していったよ」

 それはそうだけど、それだけで結婚にまで踏み切る人間はいないと思う。
 円の優しい手つきにぼんやりとしてくる意識の中、「宇宙人」と言うと、彼がまた笑った気がした。

「でも、合コンで会ったときに条件を全部聞いて、贅沢をしたくて玉の輿を狙っているような女の子じゃないってわかって……それどころか誰よりも現実的なライフプランを持ってるところにもっと興味が湧いた」

 やっぱり、変。
 変だけど、そんな円は嫌いじゃない。
 私の奥にある気持ちに一番に気づいてくれる夫は、人の心に敏感で、優しくて、その上太っ腹で……文句のつけようがない。

「自分に正直なところとか、意地っ張りなところも可愛いって思ってたけど……こうやって甘えてくれる結愛のこと、もっと好きになりそう」

 だんだん遠くなっていく円の声を必死に拾おうとするけど、沈んでいく意識には逆らえない。
 
 ねぇ、円。
 私、少しだけ……円に甘えてもいいかな?
 
 そう心の中で呟いたら、フッと身体が軽くなった。

「結愛。俺たちの関係は、きっとアイになるよ――…」

 最後、微かに聞いたような気がしたその言葉は現実だったのか夢だったのか。
 きちんと確かめないまま、私は眠りに落ちた。
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