あなたと私のカネアイ
「俺は、結愛との距離、すごく近くなったなって思ってる。キスを拒まれなくなったり、こうやって泣き顔を見せてくれたり……」
「キ、キスは割り切ったの!」

 咄嗟に強がってそう言ったけど、本当は違うってわかってる。
 だって、ついさっきソファで円からキスされたとき……私、自然と受け入れた。
 最初は隣に座られるのも、触れられるのも嫌だったのに、今は二人寄り添って座っても気にならない。キスも……嫌じゃない。
 今の私と円の関係は――「きっとアイになるよ」――夢現に聞いた円の言葉がリフレインする。
 愛は信じてない。私が円に求めているのは、お金“だった”んだ。でも、今は――?

「それでもいいよ。だけど、少なくとも割り切れるようになったのは、結愛が俺を受け入れてもいいってどこかで思ってるって証拠でしょ? 俺のこと、嫌いじゃないよね?」
「……そんなの、知らない」

 嫌いじゃない=好き、とは限らない。そうじゃない。そんな安っぽい感情は持ちたくない。
 円の手が頬に触れて、それが顎へと滑っていって、唇が触れそうな距離に鼓動が早くなっていく。

「円?」
「俺はね、結愛との距離をゼロにしたいって思ってる。心も、身体も……」

 唇がふわりと重なる。何度か啄ばむようにされて、それから下唇を少し吸うように挟まれて……舌を入れられた。二回目の深く繋がるキスは、まだぎこちなくしか対応できなくてすぐに息が苦しくなる。
 このキスは私を変にする。苦しいのに、離れたくないって思ってしまう。
 だけど、ふと胸元に降りていった手の気配を感じて身体が硬くなった。
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