あなたと私のカネアイ
「時間が経てば、適当に……普通に戻るの。いちいち謝ったり、謝られたり、そんなの面倒なだけ。家を出て、顔を合わせる機会も減って、文句も言われなくなって、せいせいしてるの。あの日だって、本当は帰りたくなかったのに!」

 これじゃあ、また八つ当たりだ。円のせいで実家に行くことになったような言い方も、関係ないって言ったくせにこうやって自分の憤りをぶつけてしまうのも。
 しかもなんだか涙腺が壊れてる――目にじわりと滲む涙を散らすように何度か瞬きしてたら、目元に柔らかいものが押し当てられて、咄嗟に目を瞑った。

「ごめん。わかった」

 何度か私の涙を拭うように唇を落とされ、そして頭を撫でられた。
 私、この前から円の前だと子供みたいに駄々を捏ねて……本当に、変になったみたい。泣いたって仕方ないって思ってるのに。
 こんな感情的な自分は嫌なのに。

「俺が口出しすることじゃなかったね。ごめん。結愛が自然に任せるっていうならそれでいいよ。でも、もうひとつ、聞かせて欲しいことがある」

 また……円は私の嫌な部分に踏み込まないでくれる。
 ホッとするのと同時に、いざ引かれてしまうと寂しくもなって、もう自分でも円にどうして欲しいのかがわからない。
 自分から切り出せなくて、円から聞いて欲しいのかもって思ってたのに、いざ聞かれると首を突っ込まないでっていう思いが前に出てきてしまう。
 私、こんなにわがままだった?
 どうして……私、どうしたいの? 円にどうして欲しいの?

「俺とのことは、どうしたい?」

 考えていたことと同じことを問われ、また息が詰まる。
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