あなたと私のカネアイ
「流されてなんてないよ……だって結愛、嫌なときは“嫌”って言うでしょ? 好奇心は……その、普通、だと思うけど」

 この得体の知れない気持ちも、円に触れられて苦しくなるのも、普通なの?

「俺以外の男に……こんな風に抱きしめられたいって思う?」
「思わない! そんなの、思わないよ……」

 自分でも驚く。
 思わないって即答したんだ、私……
 私、円だから――私のことを一番に考えてくれる人だから――こうやって近づいても嫌じゃないんだ。
 お金じゃなくて、私を見てくれる。私の気持ちを、知ってくれる。

「じゃあ、結愛の好奇心は、俺にだけ向いてるってことでしょ? 何にも問題ない。ねぇ、結愛。俺にも何かしたいって思ってくれてる?」

 円が少し身体を離して私を見る。
 私が頷くと、彼は頬に手を添えて、額をくっつけた。

「じゃあ、俺のお願い聞いて。今夜は、俺を……拒まないで」

 こんなの、お願いにならない。
 お願いなんてされなくても、円を拒もうって、思ってないんだもん。

 私は彼の背に回した手に力を込めて、その逞しい胸に顔を埋めた。
 ほんの少しだけ頭を上下させたのを、きっと円はわかってくれただろう。
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