あなたと私のカネアイ
* * *

 やってきたのはこの前と同じバー。
 ホテルから徒歩で来られる距離だった。ということは、合コンをした居酒屋からもそんなに遠くない。この前は呆然としていてあまり覚えてなかったけど。
 円さんは車で来ているから、とウーロン茶。私にはストロベリーの甘いカクテル。

「ごめんね? 連絡がつかなかったから、佳織ちゃんに頼んだんだ」
「いえ……こちらこそ、すみませんでした」

 わざと連絡を無視していたことは、やっぱり謝っておいた方がいいだろう。

「謝ってくれるってことは、嫌われたわけではないのかな?」

 嫌うも何も、私は円さんのことを好きか嫌いか判断が出来るほど知らない。
 強いて言えば、お金をいっぱい持った宇宙人ってことくらい。

「結愛ちゃんは、愛はいらないって言ってたから。別に好きじゃなくても嫌いじゃないなら俺と結婚してもいいってことでいいんだよね?」
「はぁ……」

 確かに愛はいらないけど。そもそもそんなものがあるなら見せて欲しい。
 でも、なんで口を開けば「お金」って言うような私をわざわざ選ぶの?

「円さんは私と結婚したいんですか?」

 そう聞くと、円さんはクスッと笑って「うん」と言う。
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