あなたと私のカネアイ
「あ、ありがとう!」

 外に出て、ドアが閉まる瞬間に振り向いて、もう一度そう言った。
 プレゼントのことだけじゃなくて……今までのことも。恥ずかしいっていう気持ちや意地もあって、長々とお礼を言うのはまだハードルが高いけど。
 これが、今の私の精一杯だから。
 車に乗ると、円が運転席から身を乗り出して私を抱きしめる。

「さっきの、ちゃんと伝わったと思うよ」

 そう言って、私の頭を撫でる。子供を褒めるような仕草と表情がくすぐったい。
 別に褒められるようなことじゃないのに、円はちゃんと私の“精一杯”をわかってくれるんだって思ったら嬉しくて、自分から彼に抱きついた。

「私……ちゃんと、わかってる。今まで不自由ない生活できたことが誰のおかげか」

 ただそれを、私に“お金”という形で押し付けてくるのが嫌だった。今でもそれは嫌だし、苦しかったから……謝られても許すとは言えない。
 でも、お父さんがくーちゃんを買ってくれたこと、高校や大学、留学へ行かせてくれたこと――その“事実”には感謝してる。

「生き方も性格も、簡単には変わらないよね」
「ん、そうだね。結愛もずーっと意地っ張りだしね」

 円はクスクスと笑って私から身体を離した。

「それは、いいの!」

 フンとそっぽを向くと、円はまた笑って車のエンジンをかけた。
 意地っ張りでもいい。
 円が、甘やかしてくれるから。

 円に、甘えたいから――…
< 162 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop