あなたと私のカネアイ
 私のひねくれた言動も、甘えも、意地っ張りも……全部を受け止めてくれる円に出会って、私の気持ちは少しずつ変化して今日に繋がってる。
 お父さんの言葉やお母さんの感情に振り回されてた自分が、円のおかげでほんの少しの“親心”に気づいて、大人な対応をできるようになった……かな。
 中途半端だけど、これでいいのかもしれない。
「ごめん」って言うのも言われるのも違う気がするし、かといって無条件に譲歩できるほど私はまだ大人になれないから。

 円との出会いも結婚も、小説みたいな急展開だったけど……現実は所詮こんなもの。
 でも、そんな私を好きって言ってくれる円のことを信じるようになった私は、ちょっとだけ成長できたんだって思いたい。
 きっとこれからも私の気持ちは変わっていくだろう。
 円と本当の”夫婦”になって、もっと年を重ねて……もしかしたら、円の望む家族を持つことになるかもしれない。
 そのとき私の気持ちを占めるのは、きっと愛だ。

「――では、誓いのキスを」

 誓約、指輪交換、サイン……式は順調に進んで、神父様の言葉で円がベールをあげてくれる。
 目を細めて微笑んで近づいてくる夫の唇を、私は目を瞑って受け入れた。
 軽く触れ合うだけのキスが、こんなに幸せな気持ちを生むなんて知らなかった――…
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