あなたと私のカネアイ
「結愛、明後日もお休み取ったんだってね」

 ギクッとした私が視線を上げると、円さんはとても爽やかに笑っていた。爽やか過ぎて胡散臭いとも言う。
 どうも彼は、まだ私に見せていない部分があるように思う。出会って一ヶ月ちょっとならばそれは当たり前だとも言うし、お互い様なのかもしれないけど、こんな風に曖昧に見せられると見たくなる。
 ……というか、少しイラつく。
 言いたいことがあるのなら、ハッキリ言えばいいと思ってしまう。そうすれば、私だって堂々と反論できるのに。

「結愛、二連休のときは一日お出掛けに使うんだって佳織ちゃんが教えてくれたよ」
「佳織……」

 裏切り者は身近にいたようだ。
 私は連休の場合、大体一日はふらっと買い物や映画に一人で出掛ける。朝からのときもあるし、夕方や夜に映画だけっていうときもある。それを知ってるのは家族と親しい友達くらいだ。
 もちろん円さんは知らないはずだったし、詳しく休みのスケジュールを話しているわけじゃないから、のんびり過ごせると思ってたのに。

「いつものお出掛けにちょっとおまけがつくくらいの気持ちでもいいから、俺も連れて行ってよ」

 なんだか円さんの目が「結婚しよう」って言ったときと同じような気がして、私はため息をついた。
 勝てない――直感だけど、そう思う。

「私の邪魔はしないでくださいね」

 そう言うと、彼は「うん」と嬉しそうに頷いた。
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