あなたと私のカネアイ
 * * *

 翌日。
 結局、私はお昼過ぎまで惰眠を貪った。
 ようやくお昼の鐘が鳴った頃、のろのろと起きて円さんが作ってくれていた朝ご飯兼昼ご飯を食べて、これまたのんびり支度をして、近くの大型ショッピングモールに繰り出す。
 いつもと違うのは、円さんが私の隣を歩いていること。
 三階の映画館に着いてチラッと視線を上げれば、彼は何がそんなに嬉しいのか……私を見て目を細めた。
 私は微かにため息をついて、上映時間を確認していく。

「円さんは何が観たいんですか?」
「俺? うーん……あ、このラブストーリーとか今話題だし、興味あるかな」

 ラブストーリー、という単語に眉を顰め、私は十五分後上映開始のSF映画を観ることに決めた。平日の午後で、人は少ないから席も不自由なく選べるだろう。

「じゃあ、終わったらそこのカフェで待ってます。ちょうど円さんが観たい映画の上映も十分差で始まりますから、上映終了もそれくらいでしょう?」

 そう言って、サッサとチケットを買おうとカウンターへ歩き出したところで、腕を引っ張られた。

「ちょっと待って。結愛、まさかそれぞれ違う映画を観るって言ってる? 一緒に来てるのに?」

 信じられないという表情をされて、私はまた眉を顰めた。

「円さんはそっちが観たいんでしょう? 私は観たくありません」
「興味あるとは言ったけど、絶対に観たいわけじゃないし、他にも面白そうな作品はあるよ。俺は結愛に合わせるから。デートなのに別々の映画を観るなんて聞いたことないよ」
「合わせるって……自分の観たくもない映画にお金と時間を費やすなんてもったいないです。それに皆がそうだからって私たちもそうする必要はないですよね?」

 無理に人に合わせる必要なんてどこにもないじゃない。
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