あなたと私のカネアイ
「構わないよ」

 ちょっぴりお洒落な居酒屋の半個室で開かれた合コンの席。
 高校からの仲良い友達に誘われ、次の日ちょうど仕事が休みだった私は、男性陣が医者や弁護士だというから「行く」と返事をした。
 たまには外食もしたいし、久しぶりに友達に会える上に、条件に見合う男がいればラッキー……くらいの考えだった。
 それが。
 『構わない』って……聞こえた気がするんだけど。
 暗めの照明の中、向かい側に座る3人の男のうち、私の目の前を陣取る男は黒縁眼鏡の奥に見える目を細めて微笑んでいる。

「あの、今、何て……?」
「ん? 構わないって言ったけど」

 この、1%だか0.1%だか――統計なんてとらないからわからないけど――に食い込む男を見て頬を引き攣らせるのは私の方。
 この人は日本語が理解できているのだろうか、と変な心配をしてしまう。
 でも、聞き間違いじゃない。

「条件に当てはまるのは俺だけ?」

 彼自身がちゃんと日本語を喋っているし、他4人もこの“宇宙人”に目と口を開いたまま固まっている。

「なら、もう行こ。結愛ちゃん」

 横に並ぶ二人の男性が動かないのを見てから、彼は全員分かと思うくらいの金額を机に置いて私の手を掴んだ。

「え――!?」

 いつのまにか私の鞄まで手にとって、彼は私の手を引いていく。
 強引だけど、痛くはない。
 初めてすべての質問に笑顔で頷いた男に呆気に取られていた私は、抵抗することも忘れてそのまま外へと出てしまった。

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