あなたと私のカネアイ
「もしかして、疑ってる?」
「――っ!?」

 円さんの指先が私の手のひらに触れて、私は思わず手を引っ込めた。円さんは私の反応に少し驚いて、でもすぐに笑顔に戻る。

「さっき自己紹介したけど、俺は、まぁいわゆる経営者ってやつ。都内のレストランとカフェをいくつか……ちなみにここも俺の店」

 以前はシェフとして厨房にも立っていたのだとか言ってたっけ。

「収入は多い方だと思うし、どの店の評判もそれなり、潰れるような経営はしていないつもりだから将来も心配ないと思うな」

 そこで、何かに気づいたように円さんは「ああ」と声を漏らして財布を取り出した。

「三番目の条件だけど、コレ」

 まるで名刺を配るかのように、あっさりと……机にパチッと音を立てて置き、スッと私の方へスライドさせてくる。
 綺麗な指――細過ぎず、太過ぎず、爪もきちんと揃えられていて、清潔感がある。
 なんて、円さんの手に見惚れたのは一瞬で、薄暗い中でその指先が触れている“コレ”とやらに気づいた私は「ひっ」と声を出してしまった。
 だって、これ……ブラックカード。

「あげる。自由に使ってくれて構わないよ」

 目が点、とはまさにこのことだ。
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