悪魔と天使
屋根上で彼は月を悲しげに見ていた。


「…………ふん…」


懐からあるものを取り出す。


それはハート型の白い石版だった。


「これをあいつに……いや、駄目だ。あいつの今はどうなる」


石版を懐に戻しまた、空をみる。


「………取り返しに来ないとなると諦めたのか?………いや、こうなる事がわかったのか?」


空に呟くもやはり誰も答えず、虚空に消える。


「なぁ……バル……」


それは答えが簡単な問い。だが、彼は呟かずにはいられなかった。


わかっていながらも。


「お前は……何がしたいんだ……」


月は何も知らないようにうすぐらい仄な光を世界を包み込むように発していた。


だが、彼にはその光が暖かいものではなく、より、一層冷たく感じた。


暗い暗い夜の中、動いていた彼の足は静かに止まる。同時に、静かに寝息を立てた。
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