無花果
姉の口数は一気に少なくなった。

余り笑わなくなって、家にいる時間も少なくなって行った。

学校から帰って来ると、オレたちを避けるように外に行ってしまう。

帰ってくるのは夕食の後でいつもどこかで済ませて来たと言って部屋に入った。

義父が話しをしても姉は変わることはなかった。

そのうちに気付いたんだ。母が女の本性を現したから姉も本当の自分を出すようになったんだと。

姉の幼馴染の一人が言っていた。

「たねが前のたねに戻っただけだ。たねの母さんも余り喋らない人だったけど、優しい人だった。たねはおばさんに似たんだ。しゃべんなくても、たねは優しいし、大好きだ」

お前の母さん以外はと彼の目が言っていた。

姉は必死で今の家を作ろうとしてたんだ。

自分に疑心が向けられていたと知って、その必要も無いと家を保とうとするのを止めたんだ。
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