狂想×Holic
嫌なわけない。
あんたとしか考えられない。
だって、こんなに好きなのに。
首を横に振りながら彼の背中に手を回せば、さらに強く抱きしめられる。
誕生日おめでとう、と耳元で優しく囁かれ、強張っていた身体から力が抜けていった。
……ああもう、私怒ってるのに。
こんなんじゃ、つい許しちゃうじゃないか。
むかつく。
憎たらしい。
やっぱ嫌いだ、ばか。
「……なあ。この料理、また作ってくれる?」
「やだ。食べたかったら自分で作れば」
「……俺の誕生日でもあるんだけど」
「自業自得でしょ」
日付が変わった頃。
冷えきったご馳走は全て処分し、二人で食器を片付けながら。
あんまり悔しいから、甘ったれたことを言う馬鹿を一蹴してやった。
それでも嬉しそうに頬を緩めている彼は、もうビョーキなんじゃないかと思う。
「ねえ、」
「何?」
「好きだよ」
「……ばか」
――そして、そんな彼を愛おしく思う私も、もうとっくに患ってしまっているのだ。
『狂想×Holic』
-END-