恋愛歳時記
いつもとは違うアラームの音が聞こえる。

布団の隙間から冷気が流れ込んだのを首筋で感じた。
私は完全には目が覚めておらず、傍らのぬくもりにさらに近づいた。

「香奈」

征司さんの声。
私の名を呼ぶ征司さんの声。

目を開けて、私はぼんやりと征司さんの顔を見つめた。

「おはよう」

「おはよう」

征司さんに挨拶されて何とか返す。
いつもより自分の声がかすれて聞こえる。
昨夜、散々泣いたからだろうか。

「香奈、寝ぼけてるのか? 可愛いけど」

チュッと音を立ててキスをされた。

だんだんと昨夜のことを思い出し、自分の顔が薄らと赤くなったのがわかった。



「俺にしとけ。大事にしてやる」

そう言ってキスをされて、大きな身体に抱きしめられて。
思った以上にそういう優しさに飢えていたらしい私は、最後には征司さんにしがみついてキスをねだっていた。

そんな私を征司さんは寝室に運びながらも、一緒に眠るだけでいいとキスだけで済ませてくれた。

「酔っ払いを抱かないほどには紳士だけど、お前を家に帰すほど紳士じゃない」
「ま、お前の気持ちが追いつくまで気長に待つけど、少しは妥協しろ」
「キスするのと、抱きしめるくらいはいいだろ」

なんか色々言われたけど、キスに夢中だったせいかあんまり覚えていない。
ちょっともったいなかったかも。

いきなり近づいた征司さんとの距離に戸惑いながらも、私は再び繰り返されるキスの嵐に翻弄された。





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