ハートフル・アーツ
34
幸大の入院から1ヶ月後


「退院できるんですか?」

幸大が言う

「はい。

こんなに治りの早い方は初めて見ました。

骨はどこもしっかりくっついています。


通常ならリハビリも必要なんですが…昨日の検査時の段階でも十分に動けるみたいですので…今日、ギプスを外して、明日1日様子を見てから明後日退院です。」

医師が言う


「そうですか。

ありがとうございます。」

幸大が言うと医師がギプスを看護士に外させて退出した



「もう退院とは…あんたも超人ってところだな。」

車椅子の男性が病室に入ってきた


「あんたは…郷田、だっけ?」


「泰介でいい。

こっちは、あんたに腹筋を破壊されてまだ3ヶ月は治るのにかかるって言われてるのによ。」

泰介が言う


「で、なんか用か?」

幸大が言う


「別に。

ただ、あんたの声がしたからな。

せっかく同じ病院なんだ。

挨拶くらいしてもバチは当たらねぇだろ?」

泰介が言う

「そう言えば、あんたは俺に勝ったら拳聖になれるって話だったよな?」




「ああ。

それがどうした?」


「いや、とくに深い意味はないんだけど…体の拳聖にはあったことが無くてな。」


幸大が言う


「拳聖ってのは普通は遠目で見ることはあっても直接話すことはない。


武人にとって拳聖は格が違うんだ。」


「へぇ…」


「そうじゃ。

じゃからこそ…お主は武人会、いや武術界の中でも異例すぎる存在なんじゃよ。」


「老師…窓から入って来ないでください。」


幸大が言う



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