ハートフル・アーツ
武神流総本山


「幸大のバカめ…」

なずなは玄関の前で呟く

「バカとは失礼な…」

なずなの後ろから声がした

「な!?

幸大…いつの間に…」

なずなが言う

「いつの間にって言うか、学校からずっと追いかけてきた。

あずさはあかねに預けて来たけど…多分、こっちに向かってる。

無理矢理押し付けて来たからな。」


幸大が言う


「私に何か用か?」

なずなが言う

「好きな子に会うのに…特別な理由が必要か?」

幸大が言う


「…。

ズルいな…こういう時だけカッコつけたセリフをほざくなんて…


最近はかまってくれなかったくせに…」

なずなが言う

「え?」


「この前まではツバメのことで心ここにあらず!

今度は新しい弟子!

その前まではずっとしばらく、ボーッとしたように半年も過ごしていたじゃないか!」


なずなが言う


「…。

ゴメン。」

幸大が言う



「なぁ…幸大。


私はお前の何なんだ?」


なずなが寂しそうな顔で言う

「…。」


「私はべつに幸大と付き合ってるわけじゃない…

お前は私を好きだと言ってくれるがジニーだって、シェリーだって、あかねだって、ツバメだって…皆のことを好きだと言うじゃないか…



私は幸大のことが好きだ!


幸大は…私を…

私は…幸大の何なんだ?」



なずなが今にも泣きそうに…それでも必死に涙をこらえて叫ぶ


なずなは幸大と言う人間の性格を長い付き合いから簡単に理解できているつもりだ



だからこそ、なずなは今、ここで涙を流すわけにはいかなかった

涙を流したならば幸大はなずなが望む言葉を口にして、なずなを笑顔にさせようとするからだ


だが、なずなは己が望む答えを幸大が出すことよりも、自分が笑顔になることよりも…


例え傷ついても、永遠の別れに向かうとしても…愛する者の心からの答えを聞きたかった



偽りない…幸大の真実を






なずなが幸大のことをわかるように…幸大も同じく…なずなのことはそこら辺の人間よりもわかってる

だからこそ…幸大も自分の答えを…言葉を語らなければと理解していた





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