ハートフル・アーツ
「なんで…何も言ってくれないんだ…!」

なずなが言う


「…。」

「もう、いい!」

なずなが踵を返して家に入ろうとする


ガシッ‼


幸大はなずなの腕を掴む

「ゴメン…」

幸大が言う


「なんで謝っている?

私の問いに答えられないということなのか?」


なずなが言う



「俺はまだ未熟だから…自分の思っていることを上手く伝えられない。

いや、それ以前に、自分の心さえもよくわかってないのかも知れない。


でも、だからと言って…ここで都合のいい言葉を言いたくないし…その場しのぎみたいなことを簡単に言えるほど俺は器用じゃないから…」


「だったら…」



「ただ、この場でなずなが居なくなったら…

この手を離したら…ダメな気がする。


だから…この手は離せない‼」


「…。」


「俺はなずなが好きだ!


俺はなずなの隣に居たいんだ‼」


「…。

幸大がそう言ってくれるのはわかっている…

だけど不安なんだ…


ジニーやシェリーに幸大の心がひかれてしまって…いつか、私のもとから…」


ぎゅっ。


幸大がなずなを強く抱き締める


「幸大…」


「俺は…誰になんと言われても…これからもずっとお前の傍に立つ。


それでも…いつか、何かが起きてなずなの隣から居なくなったら…



その時はなずなが俺の横に…来てほしい。」



「…バカめ、よくわからんことを…」

なずなも幸大を抱き締める



「俺だって不安だ。


ジニーたちと居ると、なずなは一歩引いてるからこのままじゃ嫌われるかも、とか…


学校でも人気があるから…イケメンのヤツとか頭のいいやつとかがなずなのことを好きだとか告白するとか言ってるのを聞くと…怖くて、行き場のない気持ちをずっと抱えてた。」




「本当にバカめ。

私は…お前のことを嫌いにならない。


根拠はないが、な。」


なずなが言う


「俺だって…だ。


まだまだガキだから…言葉に重みはないかも知れないけどさ…


いつか、必ず…なずなをもらいに行くから…」



「な!?

そ、それは…ぷ、プロポーズのつもりか!?」


なずなが動揺する


「まぁ…プロポーズの予約、みたいな?


だから…それまでは今のままで待っててくれないか?」

幸大が言う



「…仕方ない待っててやろう。

他の奴からの誘いも絶対に受けん。


だが、あまりにも待たせ過ぎたら私の方から行くからな?」



「…それはそれで楽しみだけど、そうならないように頑張るよ。


「ああ。」



二人は微笑み、抱き締め合いながら静かに唇を合わせた




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