Sweet Heart
 


しかし



「ちょっと待てよ。」



葵君は私の手を掴み、リビングに向かうのを止めた。



「何言われたんだ?」


「………。」



私は気まずくなって、手を掴まれたまま黙り込む。



言えないよ…。


一緒に寝ろって言われたなんて…。



「俺を信じるって約束したろ?言ったからって、俺は真智を嫌わねぇよ。」


「葵君…。」


「だから言ってみ?」



葵君は凄い…。


葵君の一言は力強くて



私をそれだけで安心させちゃうんだもん。



「…変なこと言うけど、良い?」


「良いよ。」



少し間をあけ、私が恐る恐る葵君に話し掛けた。



葵君はコクリと頷く。



「あのね…お父さんに今日から葵君と一緒に寝なさいって言われたの。」


「…はっ?」


「あと、お父さんと五十嵐さんが早く孫の顔が見たいって…。」



話終わった後、葵君は黙り込んだ。



うわぁ…


葵君、絶対呆れてるよね!



「何考えてんだ…あのクソ親父達は…。」



そう言って、葵君は壁を思いきり殴った。



壁が軽くへこんでいるのを見て、私はただ苦笑するしかなかった。





< 58 / 179 >

この作品をシェア

pagetop