不器用上司のアメとムチ

……このまま梅をあいつと行かせていいのか?

女を口説くのに慣れてる霞のことだ。食事だけでなく部屋も用意してるかもしれない。

そうでなくても二人は元恋人。

佐々木の時より、何かが起こる確率は高い……


「――――くそっ」


俺は机を叩いて立ち上がり、二人の出て行った扉を壊れそうな勢いで開け、廊下を走り、階段を駆け降りる。

外に出ると、門の前に停まっている黒塗りのハイヤーに二人が近づいていくところだった。


「……ちょっと待て!!」


びくりと肩を震わせて、振り向いた梅の顔は泣きそうで……
呼び止めてよかったんだと、俺は少しほっとした。

つかつかと二人の側まで歩き、無理矢理梅の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。


「ディナークルーズなら、俺が連れていく」


そう言って霞を睨むと、奴は俺を鼻で笑った。


「お前が連れていける程度の船じゃ小さくて酔いそうだが」

「……酔ってんのはお前だろ。自分のキザったらしい物言いに」

「お前の言葉遣いが下品なだけだ。……と、僕たちが言い合っても仕方ないだろう。
さて、ヒメはどうしたい?」

< 122 / 249 >

この作品をシェア

pagetop