不器用上司のアメとムチ
……このまま梅をあいつと行かせていいのか?
女を口説くのに慣れてる霞のことだ。食事だけでなく部屋も用意してるかもしれない。
そうでなくても二人は元恋人。
佐々木の時より、何かが起こる確率は高い……
「――――くそっ」
俺は机を叩いて立ち上がり、二人の出て行った扉を壊れそうな勢いで開け、廊下を走り、階段を駆け降りる。
外に出ると、門の前に停まっている黒塗りのハイヤーに二人が近づいていくところだった。
「……ちょっと待て!!」
びくりと肩を震わせて、振り向いた梅の顔は泣きそうで……
呼び止めてよかったんだと、俺は少しほっとした。
つかつかと二人の側まで歩き、無理矢理梅の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。
「ディナークルーズなら、俺が連れていく」
そう言って霞を睨むと、奴は俺を鼻で笑った。
「お前が連れていける程度の船じゃ小さくて酔いそうだが」
「……酔ってんのはお前だろ。自分のキザったらしい物言いに」
「お前の言葉遣いが下品なだけだ。……と、僕たちが言い合っても仕方ないだろう。
さて、ヒメはどうしたい?」