不器用上司のアメとムチ

「あ……あの……帰り方がわからなくて」

「帰り方……?んなもんねぇよ」


……はい?

あたしが硬直していると、肩に回していた彼の腕がするりと離れていき、代わりに手首をがしっと掴まれた。



「――最初から帰すつもりなんてないからな」



そう言って彼が浮かべたこの上なく色っぽい表情に、あたしは金縛りにあったみたいに動けなくなった。


やっぱり……
まだ酔ってるの……?



「…………きゃ!」


そのまま手首を引っ張られ、あたしたちは河原の階段を昇って舗装された道に出た。


「どこ行くんですか……」

「お前は黙ってついて来ればいい」

「だって、こっちって……」


船を降りた時から少し気にはなっていた。

でも、あたしたちには関係のない場所だと思って見て見ぬふりをしていた、妖しげなネオンの光る建物……

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