不器用上司のアメとムチ

ワンピースをハンガーに掛けてクローゼットにしまうと、ベッドの上で携帯が震えてることに気がついた。

それは京介さんからのメールで……


『お疲れさま。日曜はスペイン料理でいいかな?美味しいパエリアをヒメと食べたいんだ』


……メールは、普通、か。


『大丈夫です。楽しみにしてますね。それから素敵なワンピース、ありがとうございます』


不安を隠してそう返信すると、『それじゃ11時に迎えに行く』と、事務的な内容しか記されてないメールが返ってきた。

おやすみ、くらい言ってくれてもいいのに……


「はぁ……」


あたしは携帯を放り出し、ベッドに横になった。


……もう深く考えるのはやめよう。

日曜日のデートは、きっと楽しい。

京介さん、仕事で疲れてるみたいだったし休みの日に会えばまた違うかもしれない……

無理矢理ポジティブな要素を探し出して、あたしは目を閉じた。

そしたら瞼の裏に勝手に久我さんが出演してきたので、慌てて首を横に振る。


勝手に出てこないでよ…!


そう心の中で呟くと、そこに映る久我さんは、どこか寂しそうに笑った。

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