不器用上司のアメとムチ

「今から副社長室に殴り込むわよ!!」


……ほら、やっぱり。


「あ、あの、別にあたしはもう気にしてないんで……」

「そんな弱気でどうするの!!あなたがやらないなら私が殴ってあげるから、行きましょう!!」


誰か、助けて……と、向かいのデスクの二人に視線を送ると、佐々木も森永さんもささっとパソコンのディスプレイで顔を隠してしまった。

うわーん、みんな薄情者〜!!


結局あたしは殴り込み(?)に同行しなければならなくなり、管理課を出て小出さんと副社長室を目指す。

階段を上がっている途中、上から勢いよく階段を駆け降りてくる人がいて、周りをよく見ていなかったあたしはその人にぶつかってしまった。


「ごめんなさい……!」

「こちらこそ……あら、姫原さん……だったかしら?」


この、人を小馬鹿にしたようなしゃべり方は。


「さくらさん……」


あたしと違って有能な、京介さんの新しい秘書。

昨日の今日で、もう会社に来ているんだ……

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