不器用上司のアメとムチ
13.センチメンタル王子

翌日の管理課には、朝から小出さんの大声が響いていた。


「えぇ〜!?久我さんが交通事故で入院!!そしてあなたはまた王子に捨てられたですって!?」

「はい……まぁ」


両手で左右の耳を塞ぎながら、あたしは苦笑した。

昨日、課の中で小出さんだけが病院に来なかったのが気になって、佐々木に聞いたらこんな答えが返ってきた。


『あー、あの人が知ると一気に噂が広まって面倒だからさ。
後日森永さんのことはぼかして伝えるのが懸命だと思ったんだ』


……なるほどね、今にも誰かに言いたくて仕方がないって顔してるもん。

どうやら小出さんが他課から異動してきた理由も、噂好きが災いしてのことだと佐々木は言ってたし。


「いくら副社長ファンの私でも、その言い草は許せないわ…!梅ちゃん、頬の一つや二つひっぱたいてやったんでしょうね!?」

「い、いえ……」


小出さん、いつからあたしを梅ちゃんと呼ぶようになったんだろう……

いや、そんなことよりも。

目の前で般若のように目を吊り上げる彼女が、何か面倒なことを言い出しそうな気がしてならない。

調べたらあたしの籍は管理課のままだったし、もうあまり波風は立てたくないんですけど……

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