不器用上司のアメとムチ

「お、やっと戻ってきたか……って、お前その脚どうした」

「これは、大したことないです……それより」

「――――馬鹿野郎!!」



突然久我さんに怒鳴られ、あたしは肩を震わせた。

どうして……怒られなきゃいけないの?

あたし、ちゃんと最後まで数えたのに。


「……困ったことがあったら呼べって言ったろ……あーあ、こりゃひでえ。痛いか?」

「……少し」

「とりあえず中に入れ、手当てする」



そう言うと久我さんは管理課に入っていってしまった。

あたしはイケメンさんの居た方向を名残惜しく見つめてみたけどもうそこには誰もいなかった。

名前くらい、聞いておきたかったのにな……


「――そこに座れ、消毒する」


未だに不機嫌そうな久我さんが救急箱を持ってあたしに顎で促すから、あたしは仕方なく管理課の隅にあるソファに腰かけた。

そこから壁の時計を見ると、もう18時はとっくに過ぎていたので驚いた。

あたし、棚卸しだけでそんなに時間かかってたんだ……

だからもう、久我さん以外ここに居ないんだ。

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