不器用上司のアメとムチ
開発室に漂うのは、今日も芳ばしいコーヒーの香り。
そして麗しいイケメン2人と、今日は初めて見る美女が2人……
「初めまして、柏木愛海です。こっちは娘の愛咲(あいさ)。4ヶ月です」
「私は木原美波ですー!あ、でももうすぐ苗字は石原になる予定です!」
ちょ、ちょっと待って!
なんか情報が色々ありすぎて……でも、とにかくあたしも自己紹介しなきゃ!
「あ、あの、姫原小梅です!」
ぺこりと頭を下げてから、再び美女二人に目をやる。
柏木さんの奥さん……出産後とは思えないほど綺麗だし、なんていうか……猫みたいな目をしてて、唇が分厚くって……フェロモン系美女とでも言うのかな。
とにかくすっごくセクシー。
そして木原さんは、ぱっちり大きい目に大き目の口……派手目の顔にショートヘアが良く似合う、活発美人って感じ……?
で、苗字がもうすぐ石原になるって……
「姫原さん、久しぶり。前は余計なこと言ったみたいでごめんね……」
「石原さん……」
「彼女……美波ちゃんも一度副社長秘書にスカウトされたことがあってね、そのとき美波ちゃんに聞いた副社長の印象がよくなかったものだから……
でも、今は彼も丸くなったみたいだね。そうだ、今、コーヒー入れるから座って?」
京介さん、美波さんにまで……
あーあ。あたしって、本当に何も見えてなかったんだな……
あたしがため息をついていると、デスクが並んだ方から椅子を移動させてきてくれた石原さん。
部屋の奥にある小さなキッチンでは、美波さんがコーヒーを入れる作業を始めたようだった。