不器用上司のアメとムチ
「んんんー!!!」
やだ、怖い、気持ち悪い……
じたばたしても、男はびくともしない。
このままじゃ、あたしこいつに最後までされてしまう。
そんなの絶対に嫌……!!
「――――――オイ、そこで何してる」
テント内に突然響いた、低く掠れた声。
あたしはその声をよく知ってる。
男はまだあたしの口を塞ぎながら後ろにくっついていたけれど、あたしはすっかり安堵して体の力が抜けていた。
久我さんが、来てくれた――――……
「――その美人、うちのなんだ。返してくれ」
「…………くそっ」
どん、と身体を押されてあたしはふらふらと前に倒れ込む。
だけど地面に手をつくことはなかった。
「おっと」と言いながら両手を広げた久我さんが、あたしを受け止めたから。