不器用上司のアメとムチ

「――お前、生産統計の村山だな?このことはお前んとこの課長と人事部長に報告する。異論はないな?」

「…………っ」


久我さんが厳しい声で言うのを、彼の腕の中で聞いていた。

抜け出すタイミングがつかめなかったのと、それから少し……居心地がよかったから。


「……いいですよ、何とでも言ってください。でも、クズを寄せ集めただけの管理課のクズ女に手を出したくらい、大した処分にならないと思いますけどね」


クズ、クズ、って何回言えば気がすむのよこの男は……!

ただの負け惜しみだとしても、そこまで言われると腹が立つ。



「ま、確かに俺も含めクズの集まりかもしれんが……お前ほどのクズはいねぇよ、村山」



久我さんはもっともなことを言って男を黙らせると、あたしを一人で立たせてそいつに近づく。



「これだけは言っておくがな……姫原小梅で遊んでいいのは俺だけだ」



「は……?」

「え……?」



……久我さん。

それは、何の冗談ですか……?

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