不器用上司のアメとムチ
“あんた美人なのに変な女だな。こんなオッサンがいいなんて”
――村山が最後に吐き捨てた台詞。
いやいやいや、それは勘違いです!
……と、自分を襲おうとした男にわざわざ説明するのもおかしいので、聞き流しておいたけど……
「……久我さん。さっきのどういう意味ですか?それと、本当はあたしの名前ちゃんとわかってるんじゃないですか!!」
あたしは静けさの戻ったテントで、こちらに背を向けて立つ久我さんに問いかけた。
彼は、振り替えって微笑む。
「名前は最初からわかってるさ。梅原小梅だもんな?」
「……ちっがーう!!」
……なんなの?
さっき間違えなかったのは奇跡?
鼻息を荒くして怒るあたしを見て、久我さんが吹き出す。
「そういうのが面白れぇから、ついついお前で遊んじまうんだ。許せ、梅」
「〜〜〜〜さっきは救世主に見えたのに!!」
あたしがそう言うと、急に久我さんが真顔になって身を屈め、あたしの顔を覗き込んだ。