【BET MY EVERYTHING】
伝説の幕開け
あれから6年が過ぎた。
 
深月は16才になった。
表向きは、毎日学校に行く、高校生としての平穏な日々を送っていた。
 
だが、深月にはもう一つの顔があった。
むしろそっちの方が表かもしれないが。
 
深月は夜になると「バイト」に行く。無論ただのバイトではない。
 
深月は、その才能を生かし、「ギャンブル」で金を稼ぎ生計を立てていた。
深月には今、両親がいないのだった。
 
 
5年前。深月の両親はいなくなった。
父は「ギャンブルの旅」と称して日本全国を旅していた。
昔は深月の元に仕送りもしていた。
 
だがある日、それが途切れた。
母は父を心配して探しに出かけ、それ以来帰ってこないのだ。
 
 
そしてつい半年ほど前、父の遺体が発見された。
漁師の底引き網に引っ掛かってあがって来たその遺体は奇妙なものだった。
頭をピストルで撃ち抜かれたことが死因なのに、その遺体は左胸に強く拳を当てていたのだった。
深月はそれがやけに印象に残っていた。
 
 
――だがそれももう昔の話。
深月はそういつも自分に言い聞かせた。
そうしないと、泣いてしまいそうだったから。
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