NA-MI-DA【金髪文学少年の日常】
「ごめん、ナミダ。母さんがああいうから、もううちには来ないで」


凪人はけろっとしたもので、申し訳なさの欠片もない声でそうつげ、そして付け加えた。


「ま、外で会う分には、こそこそしてりゃ問題ないだろ」


いっそ清々しさすら覚えた。


どうやら凪人と縁が切れることはなさそうだと悟ったが、凪人の父親の書斎にはもう入れないのかと思うと、落胆は激しかった。


凪人のお父さんは、大の本好きで、凪人とナミダが読書オタクに成長したのは多分にこの人の影響が大きい。


「好きに持っていっていいよ」


凪人にはおよそ似つかない柔らかな笑顔を浮かべる人で、本を借りに行ったらいつも歓迎してくれた。


もう随分会っていない。


近所とはいえ、生活習慣にずれがあるのか、家に行かなくなると会うことはなかった。


「おじさん、元気か」


「元気だよ」


凪人がけろりと答える。


「相変わらず、本の虫なおじちゃんしてるよ。ナミダが来なくなって寂しがってる」



< 23 / 42 >

この作品をシェア

pagetop