おいでよ、嘘つきさん。
コマデリは切られた辺りの髪を触りながら言います。
『怖かった〜。でも、大丈夫だったな』

「当たり前でしょ。それより、計画よ。門番には行き先と帰りの日を伝えないといけないの」

『適当に言えば良いよ』

「駄目よ。ちゃんと考えておく事は大切よ。ほら、覚えて」

『行き先はターコイズで、帰りは3日後か。ターコイズって町あるの?』

「本当に何も知らないのね!ターコイズは隣町のお菓子が有名な町よ。ずっと前に、ターコイズからお菓子を売りに人が来たじゃない」

『あ〜、あったね。外から誰かが来るなんて珍しいから、大騒ぎだったな。でも、その人すぐに怒って帰っていったよ』

「そりゃそうよ。狂った町人に囲まれたら誰だって怒るわ。とにかく、ターコイズと3日後は絶対に覚えて!」

『わかったよ。15時半にメリッサの家に集合だね。なんで、この時間なの?』

「16時に門へ行くからよ。その時間が1番人通りが少ないの」

メリッサは町の人々が少ない時間帯を知っています。メリッサは、その少ない時間帯に外に出るからです。
メリッサは続けます。
「町人に話し掛けられたら面倒でしょ。もし、話し掛けられてもコマデリは黙っててね。私が受け答えするから!」

『僕、喋っちゃ駄目なの?』

「絶対に駄目!」

メリッサは言い切りました。コマデリが声を出す事は危険だと思ったからです。理由は、コマデリだとバレてしまう事と、馬鹿正直に計画を話してしまいそうだからです。
「私が受け答えするから、コマデリは無言で大人を演じてて!」

『うん、わかったよ〜』

「じゃあ、おさらいね。コマデリは、大人っぽい眼鏡と帽子を用意して15時半に私の家にくる。変装ができたら、門へ16時に2人で行く。その間、コマデリは黙っておく。分かった?」

『うん、わかったよ〜』

「行き先は、ターコイズ。帰りは3日後よ。いい?」

『うん、わかったよ〜』

気の抜けたコマデリの声に不安になりましたが「じゃあ、明日ね」とメリッサは帰っていきました。
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