おいでよ、嘘つきさん。
こんがり焼き上がった、チョコレートマフィンは香り高いチョコレートのおかげで最高に美味しそうです。
冷めたら箱へ入れます。
机の上にある、町を出る計画書とハサミをポケットにしまいます。
時計を見ると17時55分です。メリッサは慌てて家から出ました。

向かいの女性は楽しそうに話し掛けてきますが、急いでるのでサッサと済ませます。
『魔法使いさん、急いでるのね!ホウキで飛んでみせて!』

「そんなのできないよ。はい、良かったら食べて!」

『魔法の料理?それとも魔法の箱?』

「どっちも!じゃあね」

『素敵!魔法使いさん、帰りを待ってるわね』

メリッサは、女性を無視して走り出しました。

階段も走って上ります。
「遅刻だわ。待っててくれるかしら」


メリッサが待ち合わせ場所に到着すると、コマデリはいつも通り笑顔で座っていました。
「はぁ、よかった。遅れてごめんね」

『凄く息が上がってるよ。ほら、座りなよ』

「だいぶ、待った?」

『ううん。待ってないよ。チョコレートの良い香りがする』

呑気なコマデリに、メリッサは笑ってしまいました。
『お菓子よ。昨日は言いすぎちゃったわ』

「やった!あ、チョコレートマフィン!大好きなんだよ、これ」

『お詫びの気持ちよ』

「何に詫びてるの?まぁ、いいや。うん、美味しいよ。ほら!メリッサも食べなよ」

メリッサは苦笑いしてしまいました。あまりにも、何も考えてないコマデリに計画を理解できるか不安だったからです。
しかし、コマデリに協力してもらわないと成功しません。メリッサはポケットから計画書を取り出しコマデリに渡しました。

「町を出る計画書よ。昨夜、考えたの」

『うわ、文字がいっぱいだな。目が変になりそう』

「駄目よ、ちゃんと読んで。コマデリが大人役なんだから、堂々としないと駄目!」

『演劇みたいだね。大きめの帽子を被る、つけ髭、眼鏡…。全部、持ってないな』

「明日の15時半までに揃えて。変装なんだから、大人っぽいやつね。つけ髭は私が作ってあげるから。だから、コマデリの髪の毛を、少しだけちょうだいね」

『嫌だよ、怖いもん』

そんな言葉は無視して、メリッサはコマデリの髪をハサミで切りました。
コマデリのクルクルした黒髪をハンカチに包みポケットにしまいました。
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