おいでよ、嘘つきさん。

トリトマは、男の手を握りかえし、笑顔で言いました。



「仕方ないけど、町を出るよ…。」



トリトマの、言葉。


それは、町の人々の予想を遥かに超えていました。



「この町は大好きだったけど…、仕方ないよな。一つは駄目なんだから、俺は町を出るよ!」



無邪気なトリトマの声に、人々は呆気にとられます。


「はぁ!?」



思わず出た言葉です。


男もトリトマに怒鳴ります。


「ふざけてるのか!?そういう事じゃないだろ!」



しかし、トリトマは不思議そうな顔で言うのです。



「何がだよ?だって、一つは駄目なんだろ。だから、町を出るしかないじゃないか。それ以外に、方法があるのか?」



男は、さすがに答えられません。



「そ、そうだが…!だが、何か違うだろ!?ほら、よく考えろ!」



トリトマは、悩んだ表情。


「考えたよ。町にいさせてもらえる方法を探したけど、無理だった!だから、仕方ないけど町を出るよ。それ以外に方法が、見当たらないからな!」



男は何も言えません。

医者も、口を開いて驚愕の表情です。


トリトマは、悲しそうな声で言います。



「仕方ない。兄貴の埋葬がてら、どこか遠くへ行くよ。」



人々はざわめきます。



「トリトマは知らないのか?」



皆、思っている事は同じです。

この町の悪習を、トリトマは知らないのか?

町から出すのは危険すぎないか?

でも、知らないのなら…。

様々な考えが頭を過ぎります。
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