おいでよ、嘘つきさん。
町中がザワザワとしている中、トリトマは出かける準備を始めます。


男は「お、おいっ!」と、止めはしますが、次の言葉が出ません。

トリトマは、サフィニアを抱き抱え、車へと乗せました。


町の人々も、あまりの手際の良さと、トリトマの予想外な発言についていけず、ただ、見守るだけです。


トリトマは爽やかに言います。


「皆、今まで有難う。この町の事は大好きだったよ!でも、忘れるようにする…。じゃないと、俺は前に進めないからな…。」



思わず、女達は泣いてしまいます。

トリトマのペースにのまれた町の人々は、何が起こっているのかわかりません。

トリトマは車に乗り込むと、寂しそうな笑顔で別れを口にしました。


「じゃあな、皆!俺は消えるよ!」


それだけ言うと、すぐに車のドアを閉め堂々と町から出ていってしまいました。


残された町の人々は、嵐が去った後のような静けさ。

そして、何が起こったのか分からず、ただ立ちすくむだけ。



「ま、まぁ、知らなかったみたいだし…。」



誰かが、ぽつりと呟くと、周りの人々も同じように呟き、少しずつ、活気を取り戻します。


「もう、忘れよう…。」


この町の人々の特技です。

忘れて、前に進む。


町は、トリトマという存在を忘れることで日常へと戻っていきました。
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