おいでよ、嘘つきさん。

ただ、どうしても何かがひっかかるのです。

｢からっぽ頭のプラタナス｣
そもそも、プラタナスはちっともからっぽ頭じゃないのに。

規則正しすぎる生活を送っていたからかしら。

でも、みんなプラタナスが聡明だって事はずっと昔から認めてたじゃない。

プラタナス本人も自覚していたはずだし。

プラタナスは何でこの噂を嫌がらなかったのかしら。

いえ、寧ろ喜んでいたような…。


｢いえ、寧ろそういうモノこそ強く出すべきだわ！｣


友人は急にプラタナスの言葉を思い出しました。

その瞬間、何ともいえない不安感に襲われました。
知ってはいけない事を知ってしまったと感じ後悔と恐怖心に襲われました。

なぜなら｢私はプラタナスの友達ではなかった｣と気付いてしまったからです。

そう、私はただの町人の一人だったの。

違う、ただの町人ではないのよ。

プラタナスにとって、とても重要な町人の一人であっただけだった。

プラタナスを支援する大切な町人として。



町ではプラタナスの噂で持切り。

｢努力家プラタナス｣を見習って、邪心にとらわれるのではなく夢に向かって努力する事が美徳とされました。

そして、何より変わったのは人々が汚い噂話しで罵り合わなくなりました。

理由は単純。

｢プラタナスのように汚れのない純粋な心｣を持つことの素晴らしさに強烈な影響を受けたからです。

そんな、穏やかな日々が続くなか、一つだけ変な噂が流れ出しました。


内容は…。


『嘘つきは、だ〜れ？』


プラタナスが町を出てから｢からっぽ頭のプラタナス｣の噂が消え、変わりにこの言葉が消える事のない噂となりました。


人々は、薄気味悪い噂に興味を持ちながらも、当たり障りのない言葉を選び慎重に口に出しました。

あんなに噂話が大好きだったのに…。

理由は簡単。

一度も嘘をついた事がない人なんていないですもの。

だからでしょうか、この噂は決してなくなりませんでした。


『嘘つきは、だ〜れ？』



さぁ、嘘つきは誰なのでしょう？


ローズ・ブーケ