おいでよ、嘘つきさん。
アザミが家に帰ると、オリーブが嬉しそうに走ってきました。
「おかえりなさいませ。アザミ、全部覚えました!」
オリーブは、得意げに今朝アザミにもらった紙をみせ笑いました。
アザミは驚きます。
「一日足らずで、全部覚えたの?」

「はい。早く覚えたいからです」

「早く覚えたいってだけで、覚えられるものじゃないわ。オリーブ、あなたは頭が良いのね」

オリーブは恥ずかしくなり何て答えたら良いのか分からなくなりました。
アザミは続けます。
「オリーブの将来の夢は何?」

突然の質問にオリーブは戸惑いました。
今まで、夢について考えたことがなかったからです。

アザミは確かめるように聞きました。
「そうね、例えば学校の先生とか…」

言い終える前に、オリーブが目を輝かせて言いました。
「学校の先生になりたいです!」

アザミは、オリーブの表情を見て確信しました。
「必ず、学校に行かせてあげる」
アザミは思い、オリーブに言いました。
「学校の先生になるか…。良い夢ね!オリーブ、応援するわ」

オリーブは嬉しくなって言いました。
「いっぱい字を覚えて、絶対になります!」

アザミは嬉しい反面、少し緊張感を感じていました。
オリーブの夢を叶えるために、何としてでも学校に入れる必要があります。
しかし、一日中考えたにも関わらず良い案が浮かびませんでした。

もし、夢が叶わないと分かった時のオリーブを考えると恐くなるのです。
純粋なオリーブを傷付けるのが怖かったのです。

そんなアザミの思いが分かるはずもなく、オリーブは学校の先生になるために頑張ると決意しました。
自分が学校の先生になっている姿を想像すると、胸がワクワクします。
たくさん字を覚えて、たくさん本を読もうと決心しました。
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