おいでよ、嘘つきさん。

ある日、アザミに夫婦が話しかけてきました。
「ここの料理が有名だと聞いて来たのですよ」

アザミは我に返りました。
夫婦は、いかにも金持ちな雰囲気を出しています。
しかし、優しそうなご主人と更に優しそうな奥様です。
年齢も、50代くらいで落ち着きがあります。
ご主人が話してきました。
「私たちは、旅行中なんです。この町に来たら、貴女の料理は必ず食べようと妻と決めていたのですよ」

アザミは無表情で答えます。
「ありがとうございます。お口に合えば良いですけど。ご旅行楽しんで下さい」

ありきたりな言葉で返事をし、料理を作っている間もご主人は喋り続けます。
「ありがとう。この町は良いですね。海が近くて気持ちが良い。妻の疲れも取れますよ」

奥様が話しました。
「ごめんなさいね。うちの人、喋り出すと止まらなくて。でも、確かに良い町だわ」

アザミは無表情で皮肉りました。
「外っ面が良いだけですよ」

これを聞いた夫婦は大爆笑です。
アザミは、黙らせようと言った言葉だったので驚きました。
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