おいでよ、嘘つきさん。
取り残されたプルメリアは、力が抜け動けません。


「何で…?何で、私が里子に出されなきゃいけないの?」


プルメリアは小さく振るえ始めます。

ぽた、ぽた、と膝の上に涙が降り始めました。


顔が熱く、頭まで熱くなり何も考えられません。


ただ、自分をせめるばかりです。


「私が、死神なんか見えるって言ったから」


プルメリアは、悔しくて情けなくて泣くことしかできないのです。


「死神が見える」


この一言は、確実にプルメリアの運命を大きく揺るがしました。


町中から特別視され、父親からも蔑まれるようになった。

今までの普通が普通ではなくなりました。


「私は馬鹿よ!」


プルメリアは止まらない涙と、止まらない心の痛みに耐えています。


しかし、「死神が見える」と言ったおかげで得たものもあります。


それはアスターの興味。


ほんの些細な事ですが、今となっては大変に重要な意味を持っています。


アスターを勇気づけることができるからです。


「死神は見えないよ」


この言葉を、アスターに言ってあげられるのはプルメリアだけ。


里子に出る訳にはいかないのです。


「きっと、私が居なくなったらアスターは…」


プルメリアは思います。


「絶対に行かない!」


涙を拭い、力を取り戻した瞳で誓いました。
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