私は最強ビンボー女!
母親は葵を見た。

美しいコバルトブルーの瞳には、哀れみがまざまざと映っていたという。



『無駄だよ、葵。無駄なんだよ。』


いい含めるように、ゆっくりと母親は言った。


『朝霧家からは、逃れられない。

母さんが1番よく知ってる。


母さんもね、あんたと同じで反発したんだよ。

遠い昔にね。


でも、無理だった。無駄だった。



だって葵、ここの奴らは・・・何の躊躇いもなく、人を殺せるんだよ?


1人の小娘を、どうにかするなんて簡単さ。


殺されかけたよ、母さん。

別に母さんが死んだとしても、新しい子供を生めばいいってね。


母さん、死にたくなかったから、生きたかったから・・・

諦めた。



自分が生きるために、他人を殺すことにしたんだ。


最低だと思うよ。でもね、母さんは、死ぬのが怖かったの。


怖くて怖くて堪らなかった。



ねぇ葵。


諦めて?


お願い、諦めて。

母さん、あんたを殺したくない。


もう、大切な人を自分から殺すのは、嫌なんだよ――』




< 492 / 836 >

この作品をシェア

pagetop