*正しい姉弟の切愛事情*


「それはさ、えっと……その、思い過ごしなんじゃないかな」
 

ここ数日で考えていたこと、思い至った結論を、ゆっくり口にする。


「ほら、あたしってきっと、瑞貴にとって一番身近な女だから――」

「そうじゃないことくらい、自分で分かってる」
 

遮られて、息を呑んだ。
 

近づいた瑞貴の顔は、悲しげに歪んでいる。


まっすぐな目に射竦められて、何も言えなかった。
 

大きくて眩しいくらいに澄んだ瞳に、呑み込まれそうで、恐い――



やがて弟はつぶやいた。


「さわっていい?」

「ま、待って」
 

咄嗟にそう言うと、瑞貴の目が細まる。



「待てばいいの? いつまで?」

「え……」
 

心臓がうるさかった。

鋭く向けられた言葉と目線に、何も考えられない。


< 95 / 428 >

この作品をシェア

pagetop