*正しい姉弟の切愛事情*
「それはさ、えっと……その、思い過ごしなんじゃないかな」
ここ数日で考えていたこと、思い至った結論を、ゆっくり口にする。
「ほら、あたしってきっと、瑞貴にとって一番身近な女だから――」
「そうじゃないことくらい、自分で分かってる」
遮られて、息を呑んだ。
近づいた瑞貴の顔は、悲しげに歪んでいる。
まっすぐな目に射竦められて、何も言えなかった。
大きくて眩しいくらいに澄んだ瞳に、呑み込まれそうで、恐い――
やがて弟はつぶやいた。
「さわっていい?」
「ま、待って」
咄嗟にそう言うと、瑞貴の目が細まる。
「待てばいいの? いつまで?」
「え……」
心臓がうるさかった。
鋭く向けられた言葉と目線に、何も考えられない。