【完】隣の家のオオカミさん
「郁磨?聞いてる?」
「……あぁ」
腕を引っ張られ部屋の中へと招き入れられる。
美里もこの小さなアパートに一人暮らしだ。
正確に言えば家はここしかない。
美里は中三の時に実家と両親を同時に失った。
「なんでそんなにぼーっとしてるの?」
「別になんもねーよ」
テレビ脇に置かれてある写真立てが目に入ってしばらくの間それを見つめる。
家族写真だ。
「あぁ、日向子ちゃんとケンカでもしちゃった?」
楽しそうに笑う美里をぎょっとした顔で見つめ返す。
笑い事なんかじゃねーだろうが。