そして 君は 恋に落ちた。




少しの時間、しんと静まった倉庫。



「ありがとうございました。見つかりました」


鈴木君の言葉に、私は見ていたファイルを仕舞った。



「行きましょうか」

「あ…、ちょっといいですか?」


あまり身長の高くない鈴木君。私の顔を見て手を伸ばす。


「埃すごいですよ」


ポケットからハンカチを取り出し、眼鏡を拭き始める。
そのあまりの自然の動きに、眼鏡を取るのを止められなかった。



「あの…」

「やっぱり倉庫埃っぽいですね。僕もコンタクトに変える前は大変でした」


話しながら彼は拭き続け、「どうぞ」と渡された眼鏡は埃が取れ綺麗になっていた。


松田君とはまた違う笑顔で渡されたら、勝手に掛けてた眼鏡を取った事を怒れず、

「ありがとう…」

小さくお礼を伝えた。

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