そして 君は 恋に落ちた。



“瀬川さんとは付き合ってなかった?”



口に出して良いものか躊躇してしまう。…と、先輩は勢い良く背中を向けた。



「……先輩?」


目の前の先輩の体が震えてる。


……泣いてる…?



「……昨日の夜の事は、私の胸の一番奥に仕舞ってるから。

 だから……」


震える声で言われたら―――…



ああ、この人はやっぱり俺のこと……


「先輩…」


やめた方がいい。

分かってるのに、小さく丸めた背中を抱き締めたくて、伸ばした手は―――…



「ダメだよ、そんな顔したら。誤解されちゃうよ?
 昨日の事はもう忘れましょう?

 さ、仕事仕事!」



振り向いた先輩の笑顔とその言葉によって、届く事はなかった。


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