そして 君は 恋に落ちた。



「放して…っ」


ちらっと見えた、彼の後ろにいる彼女の姿。

少し離れているからハッキリとは見えないけど。
それでも、不安げな表情に私の顔が強張る。



「ダメだって言ってる」

後ろの彼女のことを忘れているであろう彼は、私の手を掴んだままグイッと強引に引き寄せた。

私は慌てて彼の胸に空いてる手を当て、引き剥がそうと押し出す。



「……お願いだから離れて」

「イヤだ」

「松田君…っ」


必死な私の呼び声に、俯く私の頭上から

「……そんなに俺が嫌いですか?」

と、力なく尋ねる彼の声が耳に響いた。




……嫌いなわけ無い。

嫌いになれたら………こんなに胸が苦しく、甘く震えるわけ無い。



「―――それとも、小林さんに誤解されたくない?」


言われて、顔を上げた。


―――どうしてそんな事を言ったのか、私には分からなかったから。


< 325 / 378 >

この作品をシェア

pagetop