そして 君は 恋に落ちた。


今日1日、松田君の視線から逃れるように仕事に打ち込んだ。

彼は私に話しかけようとするけど、なんとか隙を作らず。気付けば、定時になっていた。



今日は残業は必要ない。

定時に帰る人の波に乗るように急いで支度をしていると、話しかけるタイミングを計る彼に気付いた。



………ごめんなさい。

もう、全て無かったことにして下さい…!!



カバンを持ちパソコンの電源を落とす。

そして、今日1日でボロボロになった雑誌を引き出しに仕舞うと、部署全体に聞こえるように「お疲れ様でした。お先に失礼します」と声を張り上げた。

彼は周りの目を気にして話しかけない。


その隙にエレベーターまで急ぐ。



……が。エレベーターは1階。

エレベーターホールで待つ私の後ろで足音が近付く。


カチ、カチカチ


必死にボタンを押すも、エレベーターは4階で止まった。



「春日さん」


私を呼ぶ声を背中で受けながら、瞳を閉じた。

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