そして 君は 恋に落ちた。





今でもまだ、触れられた感触が残る。




いつも笑顔しか見せない彼の、熱のこもった視線。

吐息と、掠れた声……




優しく、時に激しく私を求めた彼を前にして、“好き”とかの感情の前に、女として、体が熱く疼く………



これが、“女”になった証なのか―――









「先輩…」



力無い松田君の声を振り切るように、振り向き笑顔を見せた。




「ダメだよ、そんな顔したら。誤解されちゃうよ?

 昨日の事はもう忘れましょう?


 さ、仕事仕事!」


言って、手にしていた缶をゴミ箱に入れその場を離れる。



彼の顔はもう見れなかった………。

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